Archive for 1月 2014
きみのもしもし #323
「雨の中でのわたしを撮ってよ」
どきっとするようなことを言う。
少なくともぼくはきみのその誘いに少しばかりまごついた。
雨の日の独特な湿度。数値としての湿度以上の何か。
その湿度に包まれたきみの素肌もいつもと違って、きっともっと艶があるんだろうね。
さて、どのレンズとボディを組み合わせるのがベストなんだろう。
雨の日の撮影は、晴れの日と違ったいろんな要素を考えてしまう。
「もしもし、そこのきみ。明日は雨だって天気予報が言ってるよ」
そう言われても、並べ立てたレンズとボディ、なかなか組み合わせが決まらない。
その向こう側にきみはちょこんと座って、笑っている。
ぼくもきみにつられて笑ってしまう。
そうだね、気楽に撮ることにしよう。
すべては明日の雨次第、すべては明日の湿度次第ってね。
きみのもしもし #322
きみが髪を染めた。
ずっと金髪に近い色をしていたのに、今日は黒髪。
正直、誰だか分からなかった。
黒髪も純和風でよいな。
そうだ、割烹着が似合いそう。
あれ、もともとは何色だったっけ。
出会った頃はどうだったっけ。
いろんなことが次から次に脳裏をよぎる。
「もしもし、何か感想言ってよ。似合ってるとか、かわいいとかさ」
そうだね、そうだよね。ぼくは少し照れながら頷く。
似合ってるよ。かわいいよ。
でもほんとは突然髪の色を変えた、その理由が気になってしょうがないんだけどね。
きみはそんな思いをつゆとも知らず、新しい自慢の黒髪を掻き揚げてみせた。