Archive for 3月 2014
きみのもしもし #332
朝からの陽気で公園の桜の花はかなり開いてきた。
その桜の木に取り囲まれるように、公園の中央にシートを敷きワインを開ける。
「今日は暖かいね」
「暖かいって言うより、暑いくらい。シャツ1枚で十分」
バケットにチーズを乗せて、ぱくりと頬張る。
こんなぽかぽかした昼間のワインは酔いが早い。
隣りのグループはかなりの大人数のようだ。
フリスビーやバトミントンを始めるカップルもいる。
ぼくはほろ酔い気分でシートに横になる。
空は青い。でもまだパステル色の青さだ。
「もしもし、膝枕したげよっか」
きみが頬を少し赤らめて、そう言う。
うん、いいね、うれしいね。
そんなこんなの今年初めての花見。
きみの膝枕は気持ちいい。
きみのもしもし #331
桜の花が、所々に咲いていた。
昨日までの陽気とは打って変わって、革ジャンのジッパーを止める必要がある。
まだ花冷えと言うほどには桜は咲いておらず、まずは三寒四温なんだろう。
きみは咲いている桜に近づくと、iPhoneを取り出し写真を撮り始める。
友だちの誰かに春を教えてあげるのかな。
ぼくはそんなきみにピントを合わせてパシャリと1枚。
レンジファインダー機の小さくも小気味よい音がぼくを満足させる。
「もしもし」
はいはい、何でしょう。
「盗み撮りだけじゃなくて、桜をバックにちゃんとわたしを撮ってよね」
そうだよね。
これからの一ヶ月、桜をバックに何枚のきみを撮るのだろう。
いつものようにその中の何枚かが印刷される。
その中の1枚が今日の写真なんだよね。
はい、ポーズっ。
きみの笑顔の後ろで、桜の花が小さく揺れていた。