きみのもしもし #329
街中はホワイトデーの商戦でにぎわっている。
自分もそんな中のひとりであることは知っている。
ー今日は何してるの?
陽気もいいし、表参道の裏手辺りをふらふらと。
ーふーん。
訳知り顔の返信が届く。
チョコにチョコで返す訳にも行かず、キャンディやクッキーを見て回る。
でももらったチョコの値段には、キャンディやクッキーじゃあきっと届かない。
毎年おんなじ悩みを繰り返していたりして。
いろんなお店をはしごしている最中にパシャリパシャリとしていたら、
いつの間に絞りは開放に近づき、シャッタースピードはどんどん遅くなって行く。
ーもしもーし、どんなんでもうれしいんだよ。
そう言われてもなぁ。
ー今日一日、見て回ってくれてるんでしょ。
いつしか写真も撮ってますけど。
ー一生懸命わたしのことを考えてくれて、ありがとうね。
でもまだ手ぶらのぼくがいる。
さてと、どこのにしようかな。
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