Archive for 4月 2014
きみのもしもし #336
ふと目が覚めると、きみからメッセージが届いていた。
どうもお酒が入っている模様。
とても気持ちのよいお付き合いだったのが、メッセージから伝わってくる。
そんなお付き合いは心の健康に良さそうだな。
ぼくも少しお酒を飲みたくなり、ベッドからもそもそと起きだす。
スマホは午前2時を表示している。
きみがメッセージを送ってきたのはもう1時間も前か。
リビングでウイスキーをグラスに注ぐと、きみのもしもしが無性に聞きたくなった。
きみはもうすっかり寝入っているだろうに。
どうしたものかと思案の結果、もう一杯ウイスキーをグラスに注ぎ、
石川セリのMidnight Love Callを口ずさんでみた。
きみのもしもし #335
カフェで窓側に座った。
窓と言うより歩道に面したガラス側。ガラスは足下から天井まで延びている。
薄い雲を通しての、少し柔らかめの光線がガラス越しにテーブルにかかる。
隣りのカップルが春の連ドラの話をしているのが、何気に耳に入る。
左向かいの彼女には、まさに今、彼氏らしき男性がそそくさと前に座る。
ぼくは頼んだ珈琲を口に運びながら、ふと思う。
ホットで注文した珈琲は冷めないうちに飲むのが美味しいはず。
それなのにみんなそれ以上の長居をしている。
正面の彼女たちはきっと珈琲なんてとうの昔に飲み干しているに違いない。
それなのにいつまでそこにいるんだろう。
隣りのカップルも左向かいの彼女もそう。
と言う事は、ぼくもそうするのか。そうなるのか。
でも、ぬるくなった珈琲はごめんだな。
そう思って、また珈琲を口に運ぶ。うん、まだ大丈夫。まだいける。
あと何口飲むと飲み干すんだろう。冷めないうちに飲み干したいな。
でもそれまでにきみは来てくれるかな。
柔らかめの光線が突然さえぎられた。
ガラスをはさんだところに、きみが立っていた。
口パクで「もしもし、もしもし」と言っている。
ちょうどぼくの珈琲もなくなったところだ。
ーぼくが店を出るよ。
ぼくのジェスチャーにきみは大きく頷いた。