きみのもしもし #334
久しぶりにエンジンに火を入れた。
それほどの運転はしないから、単にエンジンをかけたが正確か。
それでも心持ちエンジン音が気持ちよい。
車に積んだのは、綺麗に撮れそうなカラーフィルムをセットしたふるぅいクラシックカメラ。
そして入れたての珈琲の入ったマグカップ。
カーラジオからは都内だとお決まりのJ-WAVE。
フロントガラス越しの日射しは、春物の帽子の庇がうまい具合にさえぎってくれる。
朝起きてすぐの出発なので、まだ環八も混みだす前だ。
さてとどこまで行こうかな。
かるぅくアクセルを踏み込んでみる。
やっぱり今朝の加速はいつもと違う。
きみを誘う事もなく、今日はひとりでどこかに行こう。
そのどこかに着いたら、きみに電話をしてみよう。
きっときみは言うんだろうな。
「もしもし、どうしてひとりで行くの?」
そんな日があってもいいじゃん。
ひとりでニヤニヤとしながら、ぼくはもう少しアクセルを踏み込んだ。
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