きみのもしもし #337
久しぶりにきみとバーでグラスを傾ける。
あまりに久しぶりすぎて、何から話していいのか躊躇してしまう。
昼間のカフェだとこんな緊張もないのにね。
ふたりして顔を見合わせ照れ笑い。
ふたり並んだカウンターから見えるボトルの列を、1本ずつ簡単に紹介してみることにした。
そうしているうちに緊張も解けるだろうし、話題も飛び火することだろう。
それを期待し、そしてその期待は当たる。
グラスがゆっくりと3杯めにかかるころには、酔いも手伝い話題はたくさん飛び火した。
飛び火はいいのだけど、つい今しがたの話題を即座に思い返せない。
それも話題の一つになって、きみとのお酒がまた進む。
「そろそろ終電かな」
「も少しだけ時間あるよ」
「じゃ裏通りを少し散歩して酔いをさまそうか」
「もしもし」
「ん」
「裏通りで襲ったりしないでね」
何を言いだすかと思えば、そうきましたか。
「それもいいかもね」
「うん、それもいいよ」
それなのにこれが最後とまたお代わりをするぼくら。
終電だいじょうぶかなぁ。
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