きみのもしもし #342
ーエキナカでね、ワインを飲んでるの。
帰宅途中にきみからメールが飛び込んできた。
今日はこのあとどうしても用事があるし、
そのエキナカのある駅で途中下車するわけにもいかない。
ー誰もそんなこと頼んでないわよ。
きみはさらりと返事をくれるが、メールの文字だけでは本心は読み取れない。
電車を降りてきみに会いたい気持ちは十分にあるのだけれど、
今日ばかりはどうにもならない。
ー分かってるって。
ますますきみに会いたくなるじれったいぼくがいる。
ーもしもし。これはわたしの時間なの。だから大丈夫だよ。
そうこうしてる間に、きみのいるエキナカのある駅で電車のドアが開いた。
今度、一緒にエキナカで飲むか。
ーまたひとつ、一緒に行くところが増えたね。
約束がひとつずつ増えて行く。
少しずつでも約束を果たさないと、そろそろ愛想を尽かされるかな。
そして電車はぼくを乗せたままドアを閉めた。
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