きみのもしもし #351
また雨あしが強くなった。
風も出て来たようで、雨が横に流されているのが見て取れる。
「やっぱり中止は正解だったのね」
大会本部の正しい判断だと認めても、やはり残念なものは残念だ。
始まった当初から毎年観に行っている花火大会。
毎年毎年、今年が最後の開催だと噂が流れては翌年開催されて来た。
それが今年の噂はなんとなく信憑性があり、
心なし今まで以上に期待していた今年の花火大会の中止が決まった。
「しょうがないよ、天候には逆らえない」
わかってるもんと、きみの言葉は途絶える。
近くの万屋で花火を買って、今度の週末に近くの公園で花火をやろう。そうしよう。
「もしもし」
「あのさ」
ぼくらは同時に話しかけた。
「なに?」
これも同時。ではきみから。ううん、そっちから。
「来週、浴衣着ておいでよ。近所で花火やろ」
「うん」
今夜は横殴りの雨を観ながら、このままきみと話をしていよう。
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