きみのもしもし #353
今朝は蝉の音が聞こえない。
先週までは窓から見える木々の中から聞こえていたはずなのに。
聞こえていた蝉の音も、今日思うに、幼い頃の蝉の音よりも密度が低く思える。
もっともっと、そうだな、アニメで言うなら超音波攻撃をこれでもかと浴びせかけられていたような、
そんな気がする。
ここがそうであっても、田舎の実家はどうなんだろう。
まだまだ蝉は力強く、そして絞り出すように鳴いているのだろうか。そうあって欲しい。
ーお盆すぎたんだから、そんなものじゃないの。と、きみ。
ーまだまだ今月一杯は蝉の季節だよ。と、ぼく。
ー公園に行ってみましょうよ。近くの神社でもいいよ。きっとまだ蝉は鳴いているから。
そうか、そうだね、行ってみようか。
ーもしもし、これデートだからね。
主役は蝉じゃなく、自分なのよときみはさらりと言っている。
そうだね、蝉の音を聞いて木陰で涼んで、川沿いまで歩いて、カフェ行って。
途中で夏姿のきみをカメラに収めよう。
うん、そうしよう。
ーうちわ持って行くから。アイスキャンディー買って来て。遅刻しないでね。
きみのその言葉を聞いて、根拠もないけどなんとなくきみの浴衣姿を想像した。
それだとうれしいかも。
ぼくは持って行くカメラの選定に入った。
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