Archive for 10月 2014
きみのもしもし #362
「一緒にジョギングしませんか?」
「うーん、気が向いたらね」
「いつ気が向くの?」
「なかなかいい質問だね」
「ちゃかさないのっ」
毎年この季節になると、きみと繰り返されるこのやりとり。
そして毎年、ぼくの気は向かない。
ーもしもし、今年はどうしますか。
でもきみはなかなか諦めない。
ー公園のね、ジョギングコースも楽しいんだよ。
そしてジョギングコースから見える景色をメールで送ってくれる。
ーねっ、季節感もあるでしょ。みんなも楽しそうでしょ。
きみの言うことはいつも正しいんだけどね。
だけどぼくは走るのは苦手です。
ー歩いたっていいんだからさ。
うーん。
やっぱり今年もまたぼくはジョギングをしない。
また来年も誘ってください。
ー知りません。
きみから「あっかんべー」の写真が届いた。
きみのもしもし #361
今年は花火大会に縁がなかった。
ひとつは仕事が入り観に行けなかったし、
もうひとつは台風で中止になった。
そして毎年行っている最後の花火大会、やっときみと一緒に来る事が出来た。
今年はいつもと違うエリアに陣を取る。
夕日も見えるし、富士山も見える。海上の打ち上げ場所も正面だ。
きみもぼくもそれぞれにカメラの準備も整え、
あとは花火が始まるのを待つばかり。
少しお腹がすいたから、カバンに入っているスナックに手を伸ばす。
「もしもし、落ち着きましたか」
きみが意味深に聞いてくる。
そうだね、落ち着いたかな。
「もしもし、では手始めにわたしを撮ってくださいな」
そっか。陽のあるうちに撮らないとね。
それは失礼いたしました。
と言う事で本日の1枚目はきみのスナップ。
今年も大きな花火が観れますように。
きみのもしもし #360
台風がまだ来ないので、まったりと本を読んでいる。
幼い頃の台風の記憶はお店の看板が窓の外を飛んでいたこと。
浸水や土砂崩れの記憶はない。
最近はどうなっちゃってるんだろう。
本を傍らに置き、外を眺めてみる。
まだ風らしい風も、雨らしい雨も始まらない。
「もしもし、珈琲いれよっか」
まったりとしていたきみも、なんかまったり感に疲れた模様。
新しい豆の袋を開け、グラインダーに豆を入れる。
からんからんと音が聞こえたかと思うと、
ガガガガガと豆が挽かれる音がする。
すでに良い香りだ。
まだここいらには台風は来ていない。
ここかしこ出来るだけ被害が少なく済みますように。
でも、あのとき見えた看板はどこまで飛んで行ったんだろう。
同時にふとそんな事を思った。