きみのもしもし #359
昭和の歌謡曲がかかっていた。
「懐かしいでしょ」
きみのグラスにぼくのグラスを重ねて、返事の代わりにする。
8名で満席となるカウンターだけのそのバーはすでに6名が席を埋めていた。
久しぶりの週末のバー巡り。
ここで二軒目で、このあともう一軒行こうとしている。
お疲れ気味のぼくのリフレッシュのため、きみが考えた企画。
きみはきみでカウンターに出されるカクテルを都度スマホに収めている。
ぼくはぼくでマスターの許可をもらい、お店の雰囲気をカメラに収めている。
「少しは元気になったかな」
ぼくは笑顔で頷いて、カクテルのお代わりを注文する。
きみも笑いながら、でも
「もしもし、だからと言って飲み過ぎないでね。もう一軒あるんだから」
お店を出るとき、マスターが言った台詞は
「いってらっしゃい」
「ではまた」
今夜は美味しいお酒だな。
ぼくはほろ酔い気分できみと手をつないだ。
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