Archive for 11月 2014
きみのもしもし #366
特急電車は各駅停車よりは早く目的地に着く。
早く着くと言うことは電車に乗っている時間は短くなる。
乗っている時間は短いのに、料金が高い場合もある。
「ちょっとしか乗っていられないのに、料金高いって変じゃない?」
時間をお金で買うと言う概念ではなく、楽しい時間にお金を払う概念からすると、
楽しい電車に乗れる時間は少ないのに高い料金を払う、と言うことになるのか。
すごく以前のとってもとっても昔に、
今きみが言ったことをどこかで読んだ記憶が蘇った。
親から捨てられた血の繋がっていない年齢の違う子供たちが旅をする物語。
一番下の少年がきみと同じことを言った。
真ん中くらいのクールな少年が「特急なんだからそうなんだよ」と軽く流した。
年長の包容力のある少年が「そうだね、確かに不思議だね」と優しく言った。
何も解決していないけれど、きみと同じことを言った少年は泣き出しそうな顔から
笑顔に戻った。たぶん意見を認められたことに満足したのかな。
そんなことを思い出し、つい口元が緩んだ。
「もしもしっ」
何か言いかけたきみを制し、
「そうだね、確かに不思議だね」と、あのときの年長の少年と同じ台詞を言ってみた。
「あっばかにしてる」
ぼくは優しく首を振り、
「その発想でいいと思うよ」と口にする。
きみは少し呆れ気味に「まったくもう」って顔をする。
きみのもしもし #365
きみもこのお店に来るだろうと踏んでいた。
そしてその通り、きみも顔を出すから面白い。
ぼくはお店のひとではないのだが、
つい「いらっしゃい」と口にする。
そんなぼくにきみは一瞥をしただけで、
お店の奥にかかっているバッグに近づく。
バッグを三つほど取っ替え引っ替え肩からかけてみて、
「もしもし、そこのおにいさんっ」
きみはひとつのバッグをぼくに手渡す。
「早めのクリスマスプレゼント、これでいいよ」
「先月もそんなこと言ってなかった?」
「先月はハロウィーンでしょ」
「毎月何かあるんだね」
「来月はほんとのクリスマス」
「じゃこれは?」
「今言ったじゃん、早めのクリスマス」
ぼくにはそのふたつのクリスマスの違いがちゃんと理解できないのだが、
そんなぼくにお構いもなく、きみはぼくにそのバッグを手渡す。
なんだかなぁ、なんか狐につままれてる感じ。
そしてきみはすでに左の壁に掛かっているコートに手を伸ばしている。
うーむ、ますます、なんだかなぁ。
ライズ クリスマスツリー点灯式
二子玉川ライズのクリスマスツリー点灯式典のひとつでヴァイオリニスト 川井郁子さんの演奏。よかったですよ。