きみのもしもし #365
きみもこのお店に来るだろうと踏んでいた。
そしてその通り、きみも顔を出すから面白い。
ぼくはお店のひとではないのだが、
つい「いらっしゃい」と口にする。
そんなぼくにきみは一瞥をしただけで、
お店の奥にかかっているバッグに近づく。
バッグを三つほど取っ替え引っ替え肩からかけてみて、
「もしもし、そこのおにいさんっ」
きみはひとつのバッグをぼくに手渡す。
「早めのクリスマスプレゼント、これでいいよ」
「先月もそんなこと言ってなかった?」
「先月はハロウィーンでしょ」
「毎月何かあるんだね」
「来月はほんとのクリスマス」
「じゃこれは?」
「今言ったじゃん、早めのクリスマス」
ぼくにはそのふたつのクリスマスの違いがちゃんと理解できないのだが、
そんなぼくにお構いもなく、きみはぼくにそのバッグを手渡す。
なんだかなぁ、なんか狐につままれてる感じ。
そしてきみはすでに左の壁に掛かっているコートに手を伸ばしている。
うーむ、ますます、なんだかなぁ。
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