きみのもしもし #369
いつ以来だろうか。
きみとふたりでバーにいる。もちろんカウンター。
そして、それも週末のこんな時間。
すでにさっきのお店でほろ酔い加減のきみは、
何か話題が変わるたびに、ぼくの右腕をつつく。
「もしもし、それいいじゃん」
「もしもし、何考えてるの?」
「もしもし、素直に喜びなさい」
都度都度つつく必要もないし、
都度都度いつもの言葉を出す必要もないのにね。
でもきみの目尻は下がり、少しだけシワができる。
もちろん口角は上がり、ほっぺたまで楽しそうに笑っている。
そろそろ終電かなってタイミングで、きみはぼくを覗き込んできた。
「なにかな?」
「もしもし、何でしょう?」
それはぼくのセリフのはずだけど。
「おかわりっ」
時間は関係ないみたいだね。
「もう一杯だけ。ね、ちょうだい」
明るい酔っ払いは、それはそれでいいっか。
ぼくの好きなドライマティーニのオンザロック。
きみの口にも合ったようだし。
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