きみのもしもし #386
ー珈琲を入れてくれないか。
何も考えずに、ふときみにLINEを飛ばした。
ぼく自身も渋谷の雑踏の中にいるし、
きみがどこで何をしているかも今日は知る由も無い。
なのにただ無性にきみの入れる珈琲が飲みたくなり、
スクランブル交差点のど真ん中で立ち止まった。
キッチンで挽きたての珈琲を入れる。
キッチンを問わず部屋中が香ばしくなり、ほんの少しだけ甘い香りのする
苦めの珈琲が小さめのカップで出てくる。
そんなことを思い出しながら、
信号が点滅し始めた交差点を早足で渡りきる。
ーもしもし、早くいらっしゃい。待ってるよ。
そんな返信を期待してみたが、そんなうまく行くはずもなく、
ぼくは公園通りを原宿に向けて歩き始めた。
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