Archive for 6月 1st, 2015
きみのもしもし #392
新しい夏を迎えるにあたって、最初の花火大会だとおねえさんがマイクで説明している。
ずっと以前から一度は来たかったこの花火大会。
その打ち上げまであと10分。
この待ち時間が楽しいのかもね。
きみが握ってくれたおにぎりと、途中の商店街で買ったスパークリングワイン。
きみのカバンからはまだまだお菓子も出てくる。
「すごいね、なんでも出てくるね」
「もしもし、わたしを誰だと思っているの?」
きみはにっこりと自慢げな笑顔を見せる。
夜空は小雨交じり、夕方からずっと小康状態が続いている。
「おかしいなぁ、わたしが行く花火大会は全部快晴なのになぁ」
今夜の小雨はもしかしてぼくのせい?
苦笑いのぼくはきみとグラスを重ねる。
そろそろだね。
おねえさんがカウントダウンを告げる。
きみもぼくも姿勢を正し、前方の夜空を凝視する。