Archive for 9月 2015
きみのもしもし #406
参道の上から、神輿囃子が聞こえてくる。
近所の神社の秋祭り。
小さい神社のその小さい境内には、所狭しと出店が並び、
その中心で大人の神輿と子供の神輿、大小ふたつの神輿が威勢良く舞う。
神輿の後は仮設ステージでのカラオケ大会。
毎年の光景に毎年の進行。たぶん今日も変わらない。
「早く早く」
去年と変わらなくてもきみはぐいぐいとぼくの手を引く。
どこにそんな力があったんだろう。
驚くほどの力でぐいぐいとぼくを引く。
「去年までと同じ行事でも、同じじゃないのよ」
また不思議なことを口にする。
「神輿を担ぐ男の子もひとつお兄さんになっているし、
あなたもわたしも一年年を重ねているの」
そしてぼくの手を離し、にっこり笑ってきみは言う。
「今日はわたしの分のおみくじ引いてっ」
たしかにぼくはよく大吉を引くけど、いいのかな、自分以外の分を引いても。
「もしもし」
うん?
「わたしたち、一心同体、ね」
きみの視線の先には、今年も仮設のおみくじ箱が置いてある。
きみのもしもし #405
ネットで注文していた新しいシューズが届いた。
箱から出してサイズと色合いを確認する。
うん、思っていた通り間違いない。
早速、そのバックスキンにブラシをかけ、防水スプレーをかける。
30分もすれば防水スプレーも乾くことだろう。
お昼にはまだ間に合う。
靴を卸すのは午前中、そして靴底に炭を少しつける。
おまじないと言えばそのとおりおまじない。
ー散歩行かない?
ー相変わらず急ね。そんな気分にさせる何かがあったのかしら。
ー否定はしない。
ー肯定は?
ーいい青空だ。
ー話をそらした。でも、いい空ね。
ーそう、散歩にとってとってもいい空だよ。
ー人混みは嫌よ。
ーそれはぼくも同じ。
ーうん。じゃまずは駅前で会いましょう。
ぼくらはそれぞれに今日の空に合う服装を選び出す。
ぼくだけじゃない、きっとぼくらふたりとも。
ーもしもし?これってデートだよね。
ほらね。
きっときみもこの空に合う服装で来るに違いない。
ーもちろんっ。
ぼくはもう一度、空を見上げた。
ひさしぶりの夜写真
ひさしぶりの夜写真、と思っていたら、先月末にも影絵を観に行って撮っている。
たぶんそのときは主目的が影絵だからあまり夜写真の意識がなかったんだろうな。
今回公開できるのはこの2枚だけかな。
どっか旅行行きたいなぁ。とりあえず写真展を探そうっと。
//embedr.flickr.com/assets/client-code.js
//embedr.flickr.com/assets/client-code.js
candle tower
8月の末に影絵を観に江ノ島へ行った。
このキャンドルタワーの下が影絵の会場。
影絵、なかなか風情があっていいものですね。
w/LEICA MM+summilux 35mm
//embedr.flickr.com/assets/client-code.js
//embedr.flickr.com/assets/client-code.js
//embedr.flickr.com/assets/client-code.js
きみのもしもし #404
ひさしぶりにカメラ片手に夜の街を歩いてみた。
ISOの設定をいつもより少しだけあげて、
手持ちの中で一番明るいレンズで、
いつもより少しだけ引いた感じで撮りたくて、
そんなレンズにしてみた。
でも結局、撮っているのは行きつけのBarへの途中にあった自転車と、
Barのカウンターからの視界が今夜の被写体になった。
「いつもと変わんないじゃん」と隣のきみ。
いつの間にやら横に腰掛けている。
「なんでだろうね」
「冒険心が足りないんじゃない」ときみはストレートに言ってくる。
そしてきみがトイレに立ったとき、
ぼくはカウンター隅でマスターと話している女性客をパシャリ。
これもひとつの冒険心?とふと思う。
「もしもし、何を撮っているのやら」
席に戻ってきたきみが、すべてお見通しよとばかりに笑っている。
「マスター、お代わりもらえる?」
ぼくは、きみとぼくとそしてカウンター隅の彼女のお代わりを頼んだ。