風、空、きみ

talk to myself

きみのもしもし #406

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 参道の上から、神輿囃子が聞こえてくる。
 近所の神社の秋祭り。
 小さい神社のその小さい境内には、所狭しと出店が並び、
 その中心で大人の神輿と子供の神輿、大小ふたつの神輿が威勢良く舞う。
 神輿の後は仮設ステージでのカラオケ大会。
 毎年の光景に毎年の進行。たぶん今日も変わらない。
「早く早く」
 去年と変わらなくてもきみはぐいぐいとぼくの手を引く。
 どこにそんな力があったんだろう。
 驚くほどの力でぐいぐいとぼくを引く。
「去年までと同じ行事でも、同じじゃないのよ」
 また不思議なことを口にする。
「神輿を担ぐ男の子もひとつお兄さんになっているし、
 あなたもわたしも一年年を重ねているの」
 そしてぼくの手を離し、にっこり笑ってきみは言う。
「今日はわたしの分のおみくじ引いてっ」
 たしかにぼくはよく大吉を引くけど、いいのかな、自分以外の分を引いても。
「もしもし」
 うん?
「わたしたち、一心同体、ね」
 きみの視線の先には、今年も仮設のおみくじ箱が置いてある。

Written by ken1

2015/09/28 @ 00:54

カテゴリー: kiss

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