風、空、きみ

talk to myself

きみのもしもし #410

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ー今度は何を取り寄せたの?
 あれ?
ーまたとぼけた顔してる。
 そうじゃないけどさ。
 都内の有名どころの文具店を一通り巡って、来年の手帳を探す。
 毎年の楽しいマイ行事。
 今年はそれにプラスアルファを考えてみた。
 手帳と言えば、筆記具。
 今使っている筆記具に十分満足しているけど、
 何となくまた一本欲しくなった。
ーきみの利き手はどっち。
 右。
ー右手は一本ね。左手を入れても二本ね。
 何となく分かった。
ーそう。あなたの右手は一本しかないのにあなたは何本の筆記具を使うのでしょう。
 僕はちょっと考えた。
 でもさ、それってきみの洋服の数と同じじゃないかな。
 きみはちょっと考えるふりをした。
ーもしもし。それとこれとは違うのよ。一緒にしないで。
 きみがぼくのカメラの台数と腕時計の本数に言及しないことを祈りつつ、
 そうだね、違うね。
 ぼくはそう言って届いたばかりの箱を開け、きみに新しい筆記具を見せる。
 年代物だよ。ほら、ここんとこがいいでしょ。
 でもきみは口を一文字に閉じ、首を横に振っている。

Written by ken1

2015/10/26 @ 01:22

カテゴリー: kiss

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