きみのもしもし #414
雨上がりの参道は蒸すというよりは、左右の木々に覆われて清々しく感じる。
以前きみとここに来たのはいつだろう。
初詣かな。成人式のときにも一緒に来た気がする。
どちらにしても鳥居から30分以上はかかったような。
今日はのんびり深呼吸をしながら歩いても、10分そこらで神殿に着いた。
今、ここ。軽い気持ちできみにLINEをする。
ーめずらしいね。
きみと来たときと違って今日は時間がかからなかったよ。
ぼくはベンチに腰かけ、境内をゆっくりと眺める。
今日は人影が少ない。
ま。
きみからの返信に「ま」があった。
ーもしもし、私はあなたとそこに行った記憶はありません。
おや?
今度はぼくからの返信に「ま」が必要になった。
ま。
確かにきみと来たんだが、きみの記憶を掘り返すキーワードが出てこない。
こんなときはどうしよう。
ぼくの記憶違いかもね。戻ったら今日の様子を聞かせてあげるよ。
そして今度一緒に行こう。
少しだけ「ま」があった。
小さいま。
ーいいわよ。
きっときみは上手くまとめたなと思っているんだろうな。
そんなときのきみの口先を思い出しながら、
ぼくは今来た道を駅に向かって歩き始めた。
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