風、空、きみ

talk to myself

きみのもしもし #415

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 小春日和、きみと久しぶりに電車に揺られている。
 窓ガラスからの陽射しで背中はポカポカと暖かい。
 駅までの道、きみは少しだけ早くちでいろんなことをぼくに聞いてきた。
 そしてシートに座ると、乗り降りする人が気になってどうしようもないらしく、
 都度感想を耳打ちしてくる。
「きっと私たちと一緒に降りるわよ。降りたら後を着いて来たりして」
「忙しそうな顔つきね。でも笑顔は可愛いんだろうなぁ」
 そんなきみも陽に包まれ、いつしかまぶたも重くなってきたのかな。
 耳打ちが減り、じんわりとぼくの右肩が重くなる。
 ぼくの頬も少しだけきみの髪に触れる。
 各駅停車の揺れは、小春日和の陽射しと相まって、
 ぼくらを至福の世界へと誘う。
「もしもし、そろそろかなぁ」
「うん、そうだね、次くらいじゃないかな」
 そう答えて次の停車駅を確認する。
 あらら、そうきましたか。
「いいよ、それよりもう少しこのままでいようよ」
 気づいたきみも今の心地よさを手放したくないみたい。
 ぼくらはゆっくりと予定を変えた。

Written by ken1

2015/11/29 @ 19:02

カテゴリー: kiss

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