きみのもしもし #417
ーありがとう。
急にきみにこの言葉を伝えたくなった。
LINEでもメールでも電話でもなくて、
直接きみに向かって伝えたくなった。
ぼくの中で何が起きたのだろう。よく分からない。
ただ、歩いていたら急に伝えたくなった。
今日誰かに優しくされたわけでもなく、
さっき誰かに意地悪されたわけでもなく、
ほんと突然、伝えたくなった。
どんな理由できみに会おうか。
とりあえず踵を返して、今来た道を駅に戻ろう。
駅まで行ったら、きみの家へと電車に乗ろう。
ーと、言うわけで今ここにいます。
とは言えず、きみの前にいる。でも、
「ありがとう」と、ぼく。
きみはにっこり微笑み、
「何か作ってあげるね。寒かったでしょ」
と言って、ぼくの手を取り、
「もしもし」
「うん?」
「ありがとうね」と、きみ。
きみへのありがとうが、またひとつ増えたみたいだ。
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