Archive for 1月 2016
きみのもしもし #424
女子力?
正直、もう忘れかけていた言葉。
10年以上前、もっと前か、の言葉じゃないかなぁ。
「わたしって女子力低いかも」
突然話題が切り替わり、きみはポロリと口にする。
そもそも女子力って何だったっけ。
笑顔が魅力的?洋服のセンスが良い?美味しいお店を知っている?
リアクションが可愛い?気配り上手?メイクが自然?お料理上手?
そんなこんなが完璧だと、嘘っぽくて逆に近づき難いんだけど。
そうじゃないよね。
きみがきみらしく輝いて生きていれば、
もしかしたらそれがきみの女子力かもね。
「もしもし、どう思う?」
何があったかは聞かないけれど、
女子力ってものが仮に存在するのなら、
ぼくにとってきみの女子力はハイレベルだよ。
さて、このことをどう伝えようか。
ああでもないこうでもないと、
独りごちながら横を歩いているきみのその表情も、
ぼくにとってはきみの女子力のひとつに見えた。
きみのもしもし #423
きみはカウンターから立ち上がり、一枚一枚ゆっくりと観て回る。
写真だけじゃなく、その下に書かれているキャプションにも目を向けて。
それぞれの人がそれぞれのストーリーを思い描けるように、
楽しい思い出の記憶がよみがえるように、
そんな思いを込めて写真一枚一枚にキャプションを考えてみた。
きみのどんな思い出がよみがえるんだろう。
あたたかい思い出がよみがえるといいな。
ぼくはカウンターに座ったまま、
少しドキドキしながらきみの横顔、きみの背中を見つめている。
端まで観終えたきみはまた逆方向に観始めた。
そして一往復するとぼくの横に立ち、目を細め、二枚の写真を指差した。
「もしもし、これとこれ、ください」
ぼくの写真展初日、きみは最初のお客様。
観に来てくれて、ありがとう。
きみのもしもし #422
「きみの知ってる人だよ。やっと会えた」
「元気だった?」
「うん、ずっと冗談ばかり言ってたよ」
「きっと嬉しかったんだね」
「ぼくもそう思う」
「何年ぶり?」
「そうだな、10年くらいかな」
「でも、よく連絡取れたね」
「たまにメールはしてたんだけどね」
「やっと返事が来たんだ」
「そう、やっと返事が来た」
「だから会ってきたんだね」
「この機会を逃すと次いつ返事くれるか分かんない気がしてさ」
「もしもし」
「ん?」
「その人、幸せものだね。どんなに年月が経っても友だちなんだから」
「そうだね。何があってもずっと友だちだよ」
きみのもしもし #421
ぼくはきみのがんばりに背中を押されたのかな。
きみは習い事の発表会をやったと報告してきた。
すごく自信がなかったので内緒にしていたと報告してきた。
ぼくに知らせておくときっと聴きに来るだろうし、
そうなるとますます浮き足立つのが目に見えていたと。
ーでも、たっくさん練習したんだよ。
ーステージに出たら、緊張よりもここまで来れたんだから楽しもうって。
そう思えたと、きみはぼくを前にして楽しそうに笑っていた。
そしてその夜、ぼくは思った。
じゃあ、ぼくも。
何かできることはないか、何かどうにかならないか。
門前払いを覚悟である人にとある企画を出してみた。
不思議なものだね。
今、ぼくはそれに向けて具体的な準備をしている。
さてはて何のことでしょう。
日の目を見たらいの一番にきみに知らせるから。
だから、それまでは内緒。
「もしもしぃ、なにニヤニヤしてるの?」
さぁてね。
きみも内緒にしてたんだからさ。