きみのもしもし #432
カフェのテーブルで、きみが本を読んでいる。
ぼくは待ち合わせの時間に遅れたわけでもなく、
きっときみはこの陽気を本と一緒に楽しむために早めに来たのだろう。
そしてぼくはふと気づき席に着く。
「どうして横に座るの?」
「横というより隣の辺ね」
何それって顔で、きみは本に戻る。
うん、横顔もいい。
「いつの間にこんなにいい女になったの?」
ストレートな言葉に、きみは少し呆れ顔。
「何も変わっていませんよ」
いやいや、どうして。とても大人の香りがするよ。
「もしもし、春の陽気のせいじゃないの」
またきみは本に戻る。
きみの本を読むその佇まい。ぼくはとても嬉しくなってしまう。
隣のぼくはちゃんとついていけてるかな。
いや、今日は人の目なんて気にするのは無しにしよう。
きみはきょとんと微笑み、本をテーブルに伏せた。
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