きみのもしもし #439
ーよく出てこれたね。
ー呼びつけておいて、これだから。
ーこの時期忙しいでしょ。来れるって聞いて半信半疑だったから。
きみも赤ワインをグラスで頼んだ。
赤ワインだから、グラスが触れ合わないように互いに傾ける。
ーよほどのことでしょ、急に呼び出すなんて。
ーでも、わたしでよかったのかな。
ーわたしを呼び出してくれて、ありがとう、かな。
きみはそれなりに間を空けながら、ぽつりぽつりと静かな空気を埋めてくれる。
「マスター、この曲かけてくれる?」
マスターは黙って頷いて、ぼくのiPodを受け取ってくれた。
ー今年に入って何人めだろう。今日また一人、大好きな人がいなくなった。
店内にPPMの曲が流れる。
ーもしもし。今夜は好きなだけ飲みなさい。
ぼくの代わりなのか、きみが泣いていた。
コメントを残す