きみのもしもし #442
「ほら、そこ」
きみが視線で指し示す。
何がそこにはあるんだろう。
何がそこにはいるんだろう。
「よく見て」
新緑の木立の中に同化するように何かいる。
ほー、なるほど。
「静かにね。気づかれたら飛んでいっちゃうかも」
きみの視線の先にあるものが動いた。
ぼくらに気づいたのではなく、
枝葉の中にちょっとした虫でも見つけたのだろう。
ちょんちょんっと枝葉を移動した。
「もうこの時期になると鳴かないのね」
これよりもこんなに近くにいるんだね。
「もしもし?知らなかったの」
きみは少し驚いたようにぼくに振り向く。
「毎年春先にはここいらでも鳴いてるよ。ホーホケキョって」
きみとのそんなやり取りに気づいたのか、
一瞬ぼくらを見るような仕草をして、
そのウグイスは飛び立った。
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