Archive for 7月 2016
また電子書籍にしなきゃ
「きみのもしもし」がまた50話たまった。
今回は401話から450話まで。
50話毎にまとめて電子書籍化している。
今回のでVol.9になる。
大雑把に言って年に1冊ペースでまとめて電子書籍化。
書き始めた頃は毎週ではなく毎月のペースで書いていたので、
そうだな、10年くらいのライフワークか。いい感じ。
当初はアメリカで電子出版してたけど、今はAmazonと楽天。
これでわたしがいついなくなっても物は残る。よしよし。
1,000話くらいはいけるかな。
きみのもしもし #450
ーもしもし、そーゆーときはね。
きみが自信いっぱいに目を輝かせて、ぼくに助言する。
ー子供のときみたいに、神様にお願いしてみればいいんだよ。
ーお願いしますって。
ーわたしなんて小学生の頃、風邪で熱がなかなか下がらなかったときなんて、
枕元に置いてた目覚まし時計に「明日までに熱を下げてください」ってお願いしたもの。
それは神様なの?
ー神様はどこにでもいるの。本気で信じれば目覚まし時計にだって神様はいるの。
変な宗教じゃないよね。
ーあー、わたしのこと信じてないっ。
そうじゃないけどさ。
神様はどこにでもいて、なんでも叶えてくれるかも知れないけど、
ぼくのことを本気で心配してくれるきみがいれば、
そう、きみがそばにいれば、それでいいや、それだけでいいや。
ーちゃんとお願いするんだよ。
今、きみはぼくの前にいる。
きみのもしもし #449
ーそろそろ部屋の整理は済んだかな。
どう見てもまだ散らかっているこの部屋のドアを開けて、
きみは笑っている。
クローゼットの中から天井からすべての壁紙を張り替え、
どうせだからとカーペットまでも張り替えた。
こんなにも大変だとは思わなかったよ。
ぼくは驚いた気持ちを正直にきみに伝えた。
ー物持ちがいいのも何かしらねぇ。
足元に転がっている懐かしい品々がきみの目を引く。
あぁそこいらに転がっているのは全部捨てるから。
そんなぼくの言い訳をスルーして、
きみはひとつ何かを手にした。
ーこれ、懐かしいね。
うん、懐かしいよ。でも。
ーいいよ。捨てても。
きみはそっとその品を下に置いた。
ーもしもし、手伝ってもいい?
おもちゃ箱みたいなこの部屋の整理には関わり合いたくないと
言っていたきみ。
あまりの断捨離に少し寂しさを感じたのかな。
ぼくの隣にきみはちょこんと座り、
転がっている品をひとつずつ手に取り始めた。
きみのもしもし #448
覚えてたはずなのに。
ベッドで身体を横にしながら、考える。
夜中に喉が渇いて、目が覚めた。
ぼくの手に重なっているきみの手をそっと降ろし、キッチンに行った。
冷蔵庫の中のブリタのボトルから、よく冷えた水で喉を潤し、
そこで何かいいことを思いついた。
きみにとってとってもいいことが閃いた。
メモに取ろうかとちょっとだけ悩んで、
いつもだったらすぐに走り書きするのに、
こんなにいいことだ、忘れるはずないな、
とタカをくくって、ベッドに戻った。
だめだ、思い出せない。
ーもしもし、もう起きるの?
きみがまたぼくの手に手を重ねてくる。
きみの手はほんと柔らかい。
忘れてしまったことも忘れさせてくれる。
きみの寝息が聞こえる。
ぼくももう一回寝ようかな。
きみのもしもし #447
肌寒い夏の雨。
未明からの雨は少しずつ雨脚を強くしてきた。
今日はいろんなところに行くんでしょ。
あいにくの雨。
きみにはお留守番をお願いしたいんだけど。
いいわよ。
これから出かけて、ランチは外で食べて、
一旦荷物を置きに戻るけど、また夕方から出かけて。
何時までここを守ればいいのかな。
日付が変わるくらいまで。
じゃあ今夜のわたしはここにお泊まり?
きみさえ問題なければ。
もしもし、そうではなくてね。
そうだね。ぜひ今夜は泊まっていってくれないか。
はい、しょうがない、泊まってさしあげましょう。
きみは楽しそうにぼくを送り出す。
なんか変な感じ。
お留守番して待ってるから、飲みすぎないでね。
頷いて空を見上げる。
やはり雨は止む気配もない。