Archive for 10月 2016
きみのもしもし #463
ぜんぜん違うね。秋から冬か。
「わかってないね」
いつものカフェで待ち合わせ。
きみの装いが先週までと違う。
と言うか、いつもと違う。
「そう、いつもと違うの」
そしてぎこちない笑顔。
「服装が変わると気分も変わる。気分が変われば表情も変わる」
きみは呪文のようなセリフを一気に口にした。
「もしもし、どう?わたしの表情」
硬い。
「うーん、まだ何か足りないのかなぁ」
とりあえず、温かいコーヒー飲めば?
そうねっと答えたきみは普段通りの笑顔を見せた。
さてときみが一息ついたら、人生相談承りましょうかね。
きみのもしもし #462
ーフランス語でね。
おや?今日はいきなり何の話かな。
ーそう、フランス語でカフェで誰かと語り合いたいと思うのね。
いいねぇ、なんとなく絵になりそう。シネマのワンシーンのよう。
ーだけど、わたし仕事のこと考えて英語の勉強しかしてないのよ。
あー、英語はビジネス寄り、フランス語はちょっとおしゃれな生活なわけね。
ーそういう決めつけ、頭から否定はしないけど。そうかなぁ。
旅行で役に立つのは英語の方が多いと思うよ。
ーでもね、カフェで語り合うのならやっぱりフランス語かなぁ。
発音が伴えばねぇ、とぼくは少し笑ってしまった。
ーAlorsっ。
やっぱりぼくは笑ってしまった。
きみのもしもし #461
また会いたくて、
でも気の遠くなるほどしばらく会わないうちに、
連絡先を入れておいた携帯電話も幾台ともなく代替わりして、
今のスマホからはとっくの昔に連絡先は消え失せていた。
身近な友だちも首を横に振るし。
でも最近のSNSで検索をかけることには手を出さなかった。
なぜだろう。
SNSなんてやってないだろうって先入観があったんだろうね。
それなのにSNSの方から「このひとと繋がりませんか」とお知らせが来た。
もちろんたまたま。
そんなたまたま。
そのたまたまに乗っかって検索かけたら、
いとも簡単に会いたい人につながった。
あっけない。
そんな時代なんだね。
「もしもし、よかったね」
そんなきみの微笑みは、なぜだかぼくを安心させてくれた。
きみのもしもし #460
白のボタンダウンシャツを買った。
この季節だから当然長袖。
今年の夏前には半袖を買った。
違いは半袖のボタンダウンシャツの生地はオックスフォード。
今回買ったのはブロードクロスのボタンダウン。
と言う感じの超簡単な説明をしていたら、
「ウンチクはいいからさ」
と、きみに流された。
「今年は珍しいね、白いシャツなんて」
確かに。白いシャツはずっと避けていた。
仕事で着るワイシャツもそう。
汚れが目立つし、洗濯にアタックネオなんてのが必要になる。
ただそろそろ着こなし的にもこなせる年齢になったかなぁと。
「もしもし、年齢は関係ないよ。センスのあるなしだからね」
きみは「チッチッチッ」とぼくの目の前で人差し指を振って見せた。
「でも、まぁ良しとしましょう」
きみからのとりあえずの及第点。
なんだかちょっとだけうれしいね。
ぼくは早速着てきた真新しいボタンダウンシャツにそっと触れてみた。
きみのもしもし #459
ーまさに今、税関出たところ。
昨日から返信ないなぁと思っていたら、また国外に行ってたんだ。
あっそうか、飛行機に乗っている間の返信が途絶えてたわけね。
ーなんかごちゃごちゃいっぱい連絡入ってるけど、全部OKよ。
ごちゃごちゃはないだろうに。
ーでもよく分かんないから、今夜は泊めて。
えっ。
ーね、よろしく。もしもし、いいよね。
だめだって言っても来るんだろうな。よくある話だ。
いやいや、だめだって言ったら余計絶対来るんだろう。
じゃあ、駅まで車で迎えに行くよ。
ーそれは必要ないわ。荷物重いしタクシーで向かうから。
代わりにワインをお願いときみは言って、送信は止まった。
さてとごちゃごちゃと言われた連絡事項を
シンプルに整理しておくことにしよう。
すでにワインは白と赤、共に在庫が残っているし。