Archive for 11月 2016
きみのもしもし #467
「完璧すぎる笑顔は嘘っぽい」
きみが口を尖らせ、そんなことを言う。
ぼくのことかな。
「あなたは隙だらけ」
この流れだと褒め言葉なんだろう、けど。
じゃあ、素敵すぎる笑顔はどう?
「素敵だと思う。でも」
でも?
「一歩引いておくわ」
「そして完璧すぎる笑顔には関わらないようにする」
笑顔って難しいんだね。
完璧すぎる笑顔の人も、素敵すぎる笑顔の人も、
いつの間にか自然とそうなってるのかもね。
「じゃあ、どうすればいいの?」
どんな笑顔に遭遇しても、きみは自然に微笑んでいればいいんだよ。
「もしもし?それも難しくない?」
さぁどうだろう。
いつもどおりでいいと思うよ。
きみは「訳わかんない」と今度は笑顔で口を尖らせた。
きみのもしもし #466
ーもしもし、そんなんじゃダメだよ。
きみに久しぶりに叱られた。
ーできっこないって言う代わりに、もしかしたらって口にしてごらんよ。
それもありか。
ーきっと魔法の扉が開くから。
きみに正面切って言われると、そんな気もしてくるから不思議なものだ。
お願いがあるんだけど。
ーん?
たまに尋ねてもらえないかな。
魔法の扉、どう?ってさ。
そのくらいなら簡単よ、ときみが微笑む。
そして、楽しみだなぁとまたきみは微笑む。
さてとやりますかね。
きみのもしもし #465
ーもしもし、どんなお願い事をしたの?
おみくじを開きかけたぼくにきみが尋ねてきた。
ピンポイントなお願い事はしていないよ。
ー宝くじに当たりますように、とか?
そう、そういうのではなくてね。
良い方に導いてくださいって、お願いしたよ。
ー良い方って?
うまく言えないけど、何となく良い方にってね。
ーあっ。
おっ。
開いたおみくじは大吉だった。
ーこれもそう?
そうかも、何となくね。
境内の大樹から木漏れ陽がきみに注いでいた。
きみは気づいてないみたいだけど、
それも何となく良い感じだな。
きみのもしもし #464
ー準備はどんなに準備をしても準備しすぎることはない。
どこかで読んだ。
その通りだと思っていた。
でも一方で、時間もお金も限るある中ではどこかで見切ったり、
パフォーマンスを考えたりすることも大事だろう、とも思っていた。
するときみはさらりとこう言った。
「もしもし、人生なんていつ何が起こるかわからないよ」
「例えば、自分のところには災害は来ないって、
頭の隅でなんの根拠もなく思ってるよね」
そう、確かにね。
「備えあれば憂いなしっ。でもほどほどに」
中庸ってことかな。
防災訓練の後のぼくらの会話。
まずは非常食を新しいものに入れ替えよう。
コーヒーを飲み終えるとぼくらは買い出しに出かけた。