きみのもしもし #471
きみの出番を待つグランドピアノ。
その前にきみはさっそうと、
でもよく見ると少しだけはにかみながら現れた。
漆黒のドレスに足元は真っ赤な靴。
映画「薬指の標本」でのセクシーな赤い靴を思い出した。
ーもしもし、去年のリベンジするんだからね。
きみは昨日そう言っていた。
一年分の頑張りが確かに伝わる演奏だった。
来年は?
ー今年の気づきを克服するの。
ストイックなアスリートみたいだ。
じゃ来年も予定を空けとくよ。
長い付き合いの中で、初めて聴くきみのピアノ。
ホールを後にし、クリスマスの雑踏の中、
ぼくはドレスアップしたきみの姿を思い出し、
演奏の余韻までも楽しんでいた。
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