風、空、きみ

talk to myself

Archive for 1月 2017

きみのもしもし #476

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「ねぇ、あなたは良い人?悪い人?」
 きみが小首を傾げている。
 さぁどうだろう。
「悪い人ではないと思うけど。」
「んーっ、じゃあ、あなたは魅力的な人?退屈な人?」
 そうだなぁ。
「退屈な人にはなりたくないなとは思っているよ。」
「そうよねぇ。やっぱりあなたは無難な人生を歩んでいるのかなぁ。」
 ぼくなりの人生をただ歩んでいるだけだと思うけど。
 混んできた店内、カウンターで横に座るきみは残りのカクテルを
 一気に飲み干して、
「でも、それがあなたなんだものね。」
 そう言うと腕を組んできた。
「もしもし、わたしのことはどう思う?」
 ほんのり赤くなったきみの頬が愛らしかった。

Written by ken1

2017/01/29 at 18:45

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #475

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「あのときどうしてわたしに電話して来たの?」
 懐かしい話を改めて確認しようとしているのかな。
 きみの「もしもし」が聞きたくなってね、
 とは何だか言いづらい。
 だってきみの「もしもし」に対する思い入れは、
 きみには伝えていないから。
 きみは気づいているだろうけど、
 ぼくはこれからも伝えることはないだろう。
「ぼくは誰かに電話せずにはいられなくて、
 だからきみを選んだんだ。」
 しばしの沈黙。
「もしもし、それってStarmanだよね」
 おや?簡単に分かってしまうものなんだね。
ーまったくあなたって。
 と言うきみの表情が電話越しに見えるようだ。
 

Written by ken1

2017/01/22 at 19:03

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #474

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「あっ仕事してるっ」
 カフェでぼくのMacBookを覗き込んだきみ。
 仕事は会社でするものよとばかりの目つき。
 きみの到着が予想より早かったとも言いづらい。
「その表現だめっ」
 そしていきなり作成中の企画書にツッコミを入れてくる。
「計画1じゃなくて、Plan Aにしなよ」
 横文字ねぇ。
「だって数字は10までしかないけど、アルファベットは26文字」
 言わんとすることがよく分からない。
「もしもしぃ。Plan AがダメでもPlan Bを起動して、Plan Cも有効にできるの」
 きみは得意げにぼくのMacBookを取り上げた。
 どこの誰の受け売りなんだろう。
 そんなにたくさんのプランを考えることはないだろうに。
ー失敗を恐れず前へ進め、アルファベットはまだ25文字もあるんだから。
 それが本当の意味だった気がするなぁ。
 とにかくMacBookは今きみの手の中にある。

Written by ken1

2017/01/15 at 18:59

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #473

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 きみは何でもないことでぼくを笑わせてくれる。
 久しぶりにきみと居酒屋に入り、たくさんの日本酒を酌み交わす。
 満面の笑顔が目の前にあり、屈託無くきみは笑う。
 普段の会話の延長、でもきみは笑う。
 くいっくいっと徳利を開け、次の銘柄に悩んでは笑う。
 旬のおつまみを頼むけど、まだ旬には早いと、そこでも笑う。
 少し赤みを帯びた頬で、身振り手振りも少し大きくなり、そしてまた笑う。
 そんなきみをフィルムに収めようとカメラを取り出すと、
 きみはまた笑う。
「もしもしぃ、わたしが撮るぅ」
 フルマニュアルのぼくのカメラ、きみは悪戦苦闘、でも笑っている。
 そう、そんなきみの全てにぼくもつられて笑う。
 笑うっていいなぁ。
 素直にそう伝えると、きみはまた笑う。

Written by ken1

2017/01/08 at 19:02

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #472

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「愛はお金では買えないけれど、
 お金で表現することも時には必要です」
 きみが突然、何かを棒読みしだした。
 ほー、今日のぼくの運勢ですか。
「明けましておめでとう」
 はい、おめでとう。
「昨年もお世話しました。今年もお世話してあげます」
 そうだね、ありがとう。そして、よろしく。
「では」ときみはにこやかに両手を差し出す。
 そしてぼくに微笑みかける。
 何だろう。
「もしもし、もう一度運勢読み上げましょうか」
 あー、そうね。
 ぼくは仕舞っておいたポチ袋を取り出した。

Written by ken1

2017/01/01 at 17:40

カテゴリー: kiss

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