きみのもしもし #485
ー手をつなげば。
とうとつに、きみが切り出した。
ーもっと顔寄せて。
きみがぼくにそう手招きをする。
顔を少しだけ寄せると、すぅーときみはぼくの耳元に唇をつける。
そして、つぶやく。
ー手をつなげば、こわくないから。どんなことも、大丈夫だから。
あのとき、そう、耳の奥に言葉を残した。
残された言葉は今もたまに蘇る。
躊躇しているときに、困っているときに、誰かに後押しをしてもらいたいときに、
そんなときに、ふっと聞こえてくる。
「もしもし、ぼぉーとしてないで手をつなごっ」
きみは今もそう話しかける。
桜の季節、あのときのきみを思い出した。
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