風、空、きみ

talk to myself

Archive for 5月 2017

きみのもしもし #493

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 久しぶりに訪れたこの境内の木陰で涼んでいると、
 ぼくに一台の赤い自転車が向かってきた。
 そう言えば、きみは自転車を買ったと言ってたな。
 それも赤い色にしたと。
 ぼくはそよ風の心地良さを感じながら、
 さっき渡された9番のおみくじを開いた。
「もしもし。また大吉なのかな」
 聞き慣れた声が前方から聞こえる。
 自転車からきみが降りる。
「大吉でも大凶でもいいじゃん」
 そして微笑んで近づいてくる。
「あなたがここにいることに意味があるのよねぇ」
 そう言って、きみはぼくの隣に腰かけた。

Written by ken1

2017/05/28 at 19:57

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #492

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ーちょっと上を向いて、大股で歩いてみなよ。
    近所の境内で森林浴もどきをしていたら、きみからメッセージが届いた。
ーそうすると幸せになれるらしいよ。
    ぼくはぼくなりに幸せなんだけどなぁ。
ーあなたがもっともっと幸せになると、わたしもとってもとっても幸せになれるんだから。
    頼られてるのを喜んでいいのか、
    他力本願に口を挟むべきか。
ーとにかく、ひとりでどこかに行く時間あったら、声くらいかけてよね。
    この展開は。。。
ーどこにいるの?わたしはあなたの家のドアの前。
    きみはいつまで経っても心配性だね。
    ぼくは「ちょっと上を向いて、大股で歩いて」、そして少しだけ足早に
    きみの待つ場所に戻ることにした。

Written by ken1

2017/05/21 at 18:09

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #491

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ーI love you, Mam.
 映画の中の少年が母親に言っている。
 これからはもっと言うね、と言っている。
「言ったことないなぁ」
「いいと思うよ」
「でも、ありがとうは今朝伝えたよ。電話だけどね」
「とってもいいと思うよ。離れていても声が聞ける。素晴らしいね」
 ぼくは少しだけ照れくさい。
「もしもし、わたしには?」
「そうだね、いつもありがとう」
 きみはゆっくり首を横に振る。
 そんなきみに、ぼくは小さくI love youを口にした。

Written by ken1

2017/05/14 at 18:05

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #490

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ーどんなノートを使ってるの?
 きみがぼくの手元を覗き込む。
 ふつうのノートだよ。
ーそうかなぁ。
 どんなノートを使ってるかより、
 どんなふうに使ってるかが気にならない?
ーノートを決めると、使い方も決まるでしょ。
 ぼくは意識したことないなぁと、
 きみにノートを広げてみせる。
ーやっぱり方眼だ。サイズも想像してたよりちょっと大きめ。
 綺麗にまとまってるね。と、きみが感心している。
ーもしもし。同じものが欲しいっ。
 おねだりされるほどのノートじゃないよ。
 もっとオシャレなのもあると思うよ。
 それでも、
ーこれがいいの。わたしも綺麗に書けるようになるよね。
 と、きみが真剣に言う。
 そうだね。それに、いつでもそばにノートがあると楽しいよ。
 と、ぼくは笑った。

Written by ken1

2017/05/07 at 18:13

カテゴリー: kiss

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