Archive for 5月 28th, 2017
きみのもしもし #493
久しぶりに訪れたこの境内の木陰で涼んでいると、
ぼくに一台の赤い自転車が向かってきた。
そう言えば、きみは自転車を買ったと言ってたな。
それも赤い色にしたと。
ぼくはそよ風の心地良さを感じながら、
さっき渡された9番のおみくじを開いた。
「もしもし。また大吉なのかな」
聞き慣れた声が前方から聞こえる。
自転車からきみが降りる。
「大吉でも大凶でもいいじゃん」
そして微笑んで近づいてくる。
「あなたがここにいることに意味があるのよねぇ」
そう言って、きみはぼくの隣に腰かけた。