風、空、きみ

talk to myself

きみのもしもし #503

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 小学生の頃、親父が帰国すると必ず母親に連れられて、親父の船に乗船した。
 乗船して、神戸から東京、またはその逆を、船内で過ごした。
 甲板に立ち、甲板を歩き、つま先立って甲板から海を見た。
 たまに操舵室から先方を見せてもらえることもあった。
 狭い廊下でも、天井の低い食堂でも、
 見知らぬ大人に親しげに話しかけられたのを覚えている。
 みんな優しかった。
 一人で勝手に船内を歩いても不安になることはなかった。
 あぁ母親だけはいつも心配していたな。
「もしもし、どうしたの?」
 今日はきみと古い戦艦の見学ツアーにやって来た。
 何も考えずに艦内に入ったけど、
 親父の船と一緒だなと、ふと懐かしさがよぎった。
「一緒だ」
 つい口にした一言。
 不思議そうな顔をしたきみに、当時の母親の面影が重なった。

Written by ken1

2017/08/06 @ 18:14

カテゴリー: kiss

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