きみのもしもし #511
きみが「触って」と言ってきた。
お風呂上がりの乾燥させた髪をぼくに近づける。
きょとんとしているぼくの手を取り「どう?」と言う。
「さらさらでしょ。地肌もいい感じ」
ぼくはまだ事態を飲み込めないでいる。
「洗面台の前に置いてあったの、使ったの」
あぁあれか。
「使ってよかったんだよね」
うん。
ばたばたしてて、きみに伝え忘れていたね。
頂きものだよ。
「ありがとう。合うの探してたんだ」
きみは自分の髪を鼻先に持ってきて、香りも楽しんでいる。
「シャンプーってさ、合う合わないってとっても大事なの」
そして、きみは頭ごとぼくに押し付け、
「触って触って」
と、じゃれてくる。
シャンプーひとつでこんなに会話が生まれるんだ。
「もしもし。明日さぁドライブしよっ」
何だかぼくまでうれしくなった。
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