Archive for 11月 2017
きみのもしもし #519
同じようなことをなんど感じても、
同じようなことをなんど思っても、
そして、そのことをどうしてもきみに伝えたくて、
同じようなことをなんども伝えてきたはずなのに、
それはきっと同じことなんだろうけど、
やっぱり今夜もきみに伝えたくなって、
こんな夜中なのにきみに電話をしました。
そんなぼくにきみは
「もしもし」
とだけ口にします。
ぼくはなぜだか何も言えなくなり、
なにも伝えられないまま、
「うん」
とだけ口にします。
するときみは少しだけ間をおき、
「ありがとう」
と言ってくれます。
ぼくはやはりなにも言えず、
「ぼくのほうこそ」
とだけ伝えます。
きみのもしもし #518
いつまでもそばにいるようで、
いつでも声がきけるようで、
そうではないと、たまに気づいたり、
気づいたのに、気づかなかったふりをして。
きみの好きな食べもの。
きみの好きな花。
きみの好きな写真。
いくつ覚えてるかな。
いつまで覚えてられるかな。
丸まって寝息をたてているきみを見ていて、
ぼくは思う。
いつまでも仲睦まじく、
いつまでも笑顔で、
いつまでも楽しい会話ができるといいね。
-もしもし。
今夜はぼくからきみへもしもし。
いつまでも側にいるから。
きみのもしもし #517
きみを笑顔にする魔法の呪文なんて知りません。
この頃はすぐに夜になっちゃうし、
今夜もそんなに時間に遅れていないのに、
少しだけ気が急いてしまいます。
でも、少しでも早くきみの顔を見るために、
少しでも長くきみと一緒にいるために、
さぁ、きみに会いにいきます。
もう少しだけ待っていなさい。
ーもしもしぃ、返信はいいから、早くおいでよ。
やはりきみは待ちわびているようで、
それはそれでうれしいものです。
きみのもしもし #516
例えば、1枚の写真を撮るのに1/100秒だとして、
300枚の成功した写真を撮るには、たったの3秒。
でもそれだけの成功した写真を撮るために費やす「時」はどのくらいなんだろう。
どのくらいの「時」と向き合うんだろうね。
「知ってるよ、その話」
うん、有名だものね。
「そのフランスの写真家さんは50年かかったのよね」
そう、彼は50年かけて3秒。
「写真の前に人生があるって言ってたね」
難しいなぁ。ピンと来ないや。
「いいんじゃない。気に入った写真が1枚でも撮れれば」
うん、それが2枚、3枚と増えていきますように。
「もしもし、その中の1枚にわたしを必ず入れること」
ぼくはなんだか照れくさくなり、
きみはぼくの手を取って、
そしてぼくらは写真展を後にした。