きみのもしもし #528
もっと話せばよかったと。
あのとき、もっともっと話せばよかったと。
うぅん、もっともっともっと、かな。
きみがそんなことを口にする。
大丈夫、ここにいるから。
そんな言葉は気休めだと、きみは首を横に振る。
そう言えば、最近は曇天ばかりだ。
寒空、曇天。空気が空高くまで澄みきっていた記憶がない。
そんなとき、きみは少しだけナーバスになる。
気休めかも知れないけどさ、
でも確かに今ぼくはここにいる。
ここにいてきみと話をしている。
だから、もっと話をしよう。
ねぇ、そうしよう。
きみは幼い子供がうなずくように、
今度は首を縦に振る。
もしもし、あのね。
うん、そうだね。
ぼくらはゆっくりと話し始めた。
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