風、空、きみ

talk to myself

Archive for 2月 2018

きみのもしもし #532

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 きみが走っている。
 テレビではまだ有名走者の映像だけを流している。
 そろそろトップ走者はゴールテープを切るんだろうな。
 ぼくはネット検索で、きみの現在位置、ポイント到着予想時刻を確認する。
 おや?いつもよりラップタイムが速いな。
 と言うことは、ポイント到着予定時刻も予想より微妙に早くなる。
 うれしい誤算だな。
 テレビでは日本記録更新を期待する実況が続いている。
 応援に行く準備を早めないと。
ーもしもしっ、間に合わなきゃだめじゃんっ。
 そんな声が脳裏をよぎる。
 そうならないよう、ぼくはダウンコートに急ぎ腕を通した。

Written by ken1

2018/02/25 at 22:44

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #531

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 ずっと以前、どのくらい以前だったのか、
 とにかくずっとずっと、今となってはそのくらいずっと前のこと。
 ぼくはきみの誕生日に自分で書いた掌編小説を贈った。
 懐かしいな。
 若かったんだろう。
 でも自信作だった。
 陽射しがきみを包む小説。
 ぼくの掌編小説の原点なんだろう。

 今日、久しぶりにきみと陽当たりの良いカフェに入った。
 話が弾んでいつしか、きみの顔が正面から陽射しに包まれていく。
「席を替わろうか」
「うん」
 今度はきみの顔の右半分だけが陽射しを受ける。
 それをきみは長い髪で遮った。
「もしもし、ね、今度は大丈夫」
「以前もこんなことあったっけ」
 きみは笑って答える。
「あの時の小説の中でね」
 きみもまだ覚えていたようだ。
 少しくすぐったい感じがした。

Written by ken1

2018/02/18 at 19:41

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #530

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ーもしもし?また出かけるの?
 きみのあきれた顔がスマホの向こうに見えるようだ。
ー風邪ひいて具合悪いんでしょう?
 そのはずなんだけど、薬も効いてるみたいだし、陽気も良いし。
ー昨日も同じこと言ってた。そして夜は咳き込んでお話できなかった。
 そうなんだけどさ。
ーでも今夜は咳き込んでもいいよ。
 大丈夫だよ、昨日ほど出歩かないから。
 今夜はちゃんと電話するよ。
ーいいの。今夜はそっとしといて。
 そしてきみは付け加える。
ーわたし、インフルになっちゃったの。
 えええ、じゃ苺もっていこうか。パックのお粥も要るよね。
 ぼくは少し動揺している。

Written by ken1

2018/02/11 at 22:14

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #529

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ちょっとヤダ。と、きみが言う。
なんとなく微笑ましい。
なぜだろう。
きみの顔を覗き込んで、少し考える。
そうか、ヤダの前にちょっとがついてるからか。
ぼくは勝手に納得する。
いいよ、やんなくても。と、ぼくは答える。
きみはキョトンとする。
もしもし?やんなくていいの?
上目遣いに聞いてくる。
ヤなんでしょ。
ヤじゃない。ちょっとヤなだけ。
そしてきみはやり始める。
それ終わったら散歩に行こうよ。
ぼくの誘いにきみは大きく頷いた。

Written by ken1

2018/02/04 at 18:32

カテゴリー: kiss

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