Archive for 4月 2018
きみのもしもし #541
ーしたいことをやりたいって思ってるでしょ。
うーん、思ってはいないけど、できればいいよね。
ーそれは無理。
なんで?
ーだって、したいことができるのは神様だけだもの。
そりゃあ神様だったらできるだろうけど。
ーだからぁ、そんなことは神様に任せて、わたしたちはできることをやろう。
できること?
ーうん、できることだってまだやってないじゃん。
ーだから、まずはできることをちゃんとやろうっ。
ーもしもしぃ、聞いてるぅ?
きみのもしもし #540
ーもしもし。自分から動かなきゃ、何も変わりませんよ。
きみがニコニコしながら、ぼくに何やらチラシを差し出す。
毎回出している写真展以外にも、こんな写真展の公募もあるよ。
どうしても何か変わって欲しいとか、そんなんじゃないけど、
そしてあなたがそこまで求めていないのも知っているけど、
けどけどけど、
せっかくだから、いつものライフワークの一つに加えてみてはいかが。
ーそうだね。
あっという間に、明日になって、
あっという間に、今月も終わって、来年になって。
できるうちに、できることをやっておきますか。
ーうん。わたしもあなたの何かにお役に立てれば光栄です。
きみはただうれしそうに頷いた。
ぼくはいつもその顔が見たくて、頑張っているのかな。
そんなことを知ってか知らずか、きみはまたニコニコしている。
きみのもしもし #539
おはようって何回も言うきみ。
そう言えば、いただきますも何回も言う。
「もしもし、なに笑ってるの?」
そして、もう一つ気がついた。
ー行ってらっしゃい。
「うん、行ってきます」
靴を履き終えたきみ。
きみは毎回ドアを出るまでに、
何回の行ってきますを口にしているのだろう。
少なくとも3回くらいは言ってそうだな。
そして、ドアを閉めようとしたきみはまた口にした。
「行ってきまぁす」
はい、行ってらっしゃい。
なんとなくいい感じ。
今日もいい一日になりそうだ。
きみのもしもし #538
小学校の校庭の横。
路地をいっぽん入る。
不思議と小学校独特の音から解放される。
「ね、静かでしょ」
きみはここのこの静かな空気を乱さないように、
小声でぼくに話しかける。
「ここのね、ブレンドがおいしいのよ」
そしてマスターに珈琲を二つお願いする。
確かに落ち着く。
ぼくもこのお店の雰囲気に身を委ねてみる。
そして珈琲の香りがぼくらを包む。
「もしもし、お話しましょ」
そうだね。
静かな時間の中できみと向き合う。
少しだけいつもと違うシチュエーション。
なんとなく新鮮な感じ。
ぼくらは今週一週間の様子を互いに伝えあった。
きみのもしもし #537
まだここいらの桜は咲いている。
でもちょっとした風に花々は揺られて、
ぼくらの目の前で風に乗った桜の花びらが優しい舞を見せてくれる。
「もしもし、どう?」
夜桜見物が早すぎる開花でほとんど葉桜見物になった昨夜のきみの企画。
それを挽回しようと今朝突然きみが組んできたここいらでの桜見企画。
ありがとう。今年もきれいな桜が見れました。
そしてきみと桜の木々を見上げながら歩いていると、
裏手の山から教科書通りのウグイスの鳴き声までもが聞こえてきた。
「すっかり春だね」
ぼくらはどちらからともなく、そう口にした。