きみのもしもし #542
きみが精一杯口を一文字にする。
きみは口を一文字にすると笑窪ができる。
ただし右側だけの片笑窪。
かわゆいんだけど、
これはきみにとってはよろしくない状態の証。
ー失くしたの。
とっても大切にしていたものをどこかに落としたらしい。
一生懸命笑顔を保とうとして、
きみの片笑窪はますます深くなる。
ー言われなくてもわかってる。
そうだね、形あるものはいつかは壊れ、いつかは無くなる。
ー大切な思い出と思いはずっと残るんだもん。
瞬間、きみの笑窪が消えた。
ーもしもし。でもね。でもね。
大丈夫。明日には見つかるよ。
もっともっと思いが深くなるように、
きっときっと明日には見つかるよ。
ー無責任っ。
きみは呆れず怒らず、笑ってくれた。
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