きみのもしもし #554
「文字はね、きれいに書けるに越したことはないけどさ」
ぼくの手帳を覗き込んで、きみがそう言う。
「読んでもらうって言う意識は大切よね」
いや、これぼくの手帳だし、ぼく個人のね。
「うぅうん、日頃から意識してないといざと言うときに書けないわよ」
きみはチッチッチッと人指し指を振る。
「でもきれいって言うより歳相応の字が書ける人に憧れるなぁ」
歳相応って?とぼくが問うと、きみが今度は首を振る。
「大の大人がいつまでも丸っこい文字ってのもねぇ」
読みやすいと思うけどなぁ。
「お仕事やポジションにもよると思うよ」
そしてきみはこう言った。
「もしもーし。一緒にペン字でもやる?」
もしかして、全てはきみ自身のことだったりして。
でも、ぼくは素直に頷くことにした。
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