きみのもしもし #555
東京湾の華火大会がなくなって、もうどのくらい経つのだろう。
オリンピックが終わったら再開するのかな。
同じあの場所で再開するのかな。
違う場所で再開するのかな。
それとももう再開しないのかな。
きっと何も知らないのはぼくらだけなんだろうけど、
いつかまた東京湾できみと一緒に花火を観たいなぁと思う。
「もしもし、なにぼーっとしてるの?」
きみが横から話しかけて来る。
「そろそろ始まる時間でしょっ」
港で打ち上げる花火大会をあれから近郊でいくつか観てきたけれど、
毎年観に来るようになったのは、ここの花火大会。
そもそもここの対象はこの町の方たちだから、
東京湾に比べると規模は当然小さい。
それでもここを観に来始めて3年目ともなると、
ぼくらはぼくらなりに小慣れて来た気もする。
いい花火大会だ。とぼくが言うと、
「頑張ってる花火大会だと思うのよね」
きみはにっこりと笑顔で答え、
夜空に広がった一発目の大きな花火に顔を向けた。
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