きみのもしもし #556
「想い出はいくつあっても足りないね」ときみが言う。
人は忘れていく生き物だとよく耳にする。
想い出を100個作っても、いったいいくつ憶えているのだろう。
忘れたくないのに忘れてしまう想い出もある。
「だったらひとつでも多くの想い出を作ろっ」
きみはそう言って、
今日と明日のふたりの共同作業をぼくに伝える。
「もしもし」
「何かな」
「わたしはぜーんぶ憶えているのよ。何ひとつ忘れない」
「そうだね。ぼくもそうだよ」
忘れないために、せめてもの抵抗。
ぼくらはそっと手を繋ぐ。
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