きみのもしもし #563
きみからランチのお誘いがあった。
待ち合わせはそのお店。
ぼくがお店に着くと、きみはニコニコと待っていた。
テーブルには真新しいメニューが広げてあり、
きみはその中のひとつを指さした。
「覚えてる?」
そんな問いかけはずるいなぁと思いつつ、
でも何もピンと来ない。
「もしもし、教えてあげる」
きみは自慢げでもなく、ほんの少しだけ頬を染めて続けた。
「初めて一緒にランチをした場所はここ」
え?
「そして、そのとき食べたのはこれ」
え?
当時のお店はすでになく、その場所には今はこのお店があり、
ただ、当時から評判のよかったこのメニューだけは受け継がれているらしい。
よくたどり着けたね。
ぼくは素直に感心する。
きみは素直に胸を張る。
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