Archive for 2月 2019
きみのもしもし #584
きみに伝えた。
予定していた今年の夏のパリは、どうも行けそうにないと。
きみはキョトンとして、
何しに行くつもりだったんだっけと。
パリでのんびり散歩して、
そして会ってみたい人もいるんだ。
そうぼくは答えた。
もしもし、分かってないなぁ。
きみはさらりとこう言った。
夢を見ることができれば、それは実現できるのよ。
きっと会えるよ。
うん、そうだね、そのとおりだね。
ぼくは少しだけ気持ちが軽くなったのを感じた。
きみのもしもし #583
懐かしすぎる雑誌が出て来た。
それも一種類だけではなく、複数のタイトル。
今も刊行されているのかな。
当然、ページは日焼けしている。
破らないようにゆっくりと、それだじゃなくて、
当時にタイムスリップする感覚で、胸はドキドキする。
そして、ついに見つけた。
あの頃、世の中に何の不安もなく、
輝ける未来だけが見えていた、それを信じていた、
そんなみんなが夜な夜な集っていた、
そんなBar Moveが特集されているページ。
「もしもし、POPEYE、HotDogって」
そう言ってきみはきみの懐かしいあの頃にタイムスリップしたみたいだ。
きみのもしもし #582
ー何を歌うわけ?
きみが不思議そうな顔をする。
そうだろうな、だってカラオケには普段行かないものね。
ーえ?何それ?
曲名を聞いて、きみは輪をかけて不思議そうな顔をする。
Puff The Magic Dragon、Blowin' In The Wind、500 Miles。
これらはぼくらが大切にしている歌なんだ。
だからあいつらと会って二次会がカラオケになると、
英語の授業でこの曲を教えてくれた先生を偲んで、
みんなで合唱するわけ。
もちろん英語だよ。
きみは少し考えて、この曲たちの共通点に気づいたようで、
ーもしもし、もしかしてLemon Treeもかなぁ。
相変わらずきみはカンが鋭いね。
きみのもしもし #581
伝えたいのはそうじゃないのに。
つい、ごめんって言ってしまう。
口ぐせなのかな。
きみは笑って聞いてくれる。
ーもしもし、分かっているからいいのよ。
そして改めて、口にする。
言われたきみの方が照れている。
そんな気がした。
不思議な言葉だね。
ぼくの方も少し照れている。
ごめんね、ぼくが照れちゃって。
あっ。また言った。
ーふふふ。いいんじゃない。
きみは笑って聞いてくれる。
伝えたいことは、ありがとう。
今度は、そしてこれからはさらりときみに言えますように。