風、空、きみ

talk to myself

Archive for March 2019

きみのもしもし #589

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 三寒四温とはよく言ったものだなぁと毎年思う。
 春はもうそこまで来ているのに、
 毎年律儀に寒くなったり暖かくなったり。
ーでもね。
 きみは若い桜の木を見ながら話をする。
ーこの木たちもきっと花を開くタイミングを覚えるんだよ。
 タイミング?
ーこの時期は暖かくなったり、寒くなったりするものだと覚えるの。
 そして、みんなが愛でるタイミングもね、と。
ーだから、年輪を重ねた大木の桜は今日みたいな寒い日でも、
 もう咲く時期なんだって知っていて、きちんと花を開いているでしょ。
 先方に見える大きな桜の木をきみは指差した。
 そうかなぁ、陽当たりなんじゃないかなぁ。
ーもしもし、私の言うこと、信じなさいっ。
 きみは別の神社の桜の木で、持論を証明するらしい。

Written by ken1

2019/03/31 at 19:41

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きみのもしもし #588

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ー忘れたんでしょっ。
 その通り。
 いつもは便利だし、それが当たり前なんだけどね。
ー最近はなんでもそうね。
 ぼくは今日、スマホを家に忘れたまま外出をした。
 忘れたことに気づいた時には外出先での用事が進んでいて、
 その用事が済むまでは家に戻れない。
 そしてその用事は思いの外、時間を要し、
 きみとの待ち合わせの時間を大幅に超える。
 やっと帰宅すると、幾つものメッセージや着信の履歴があった。
 もちろんきみからの。
ーもしもし?ところで、わたしの番号、そらで言える?
 言えなきゃいけないんだろうけど、
 はたと思い出せないぼくだった。

Written by ken1

2019/03/24 at 19:57

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きみのもしもし #587

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 きみからの突然のお知らせ。
 今日、仕事を辞めたと言う。
 どうするのかな。
「ちょっとひと休み」
 きみは一点の曇りも感じさせないクリアーな響きで、そう答えた。
 そのあとは?
「おっきな方向性はあるけど、細かいところはゆっくり考えるわ」
 ブレのない感じが口調から伝わってきた。
 会えるかな。
「もしもし。いつでも会えるわよ」
 きみはふふふと笑みを浮かべ、
「以前、あなたがひと休みしたときも、わたしはあなたと会ってたじゃない」
 立場があのときの逆になっただけ、だからいつでも会えるのよ、
 と、きみはゆっくり微笑んだ。

Written by ken1

2019/03/17 at 19:46

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きみのもしもし #586

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 きみが「あそぼ、あそぼ、あそぼ」と言ってくる。
 いいよ。今週ずっと忙しかったからね。
「今週そして昨日もでしょ」
 気づかないうちに、きみとの触れ合いが少なくなっていたんだろうね。
 でも、何して遊ぶわけでもなく、
 今週の話題が、きみの口からどんどん出てくる。
 そうなんだ、いろんなことがあったんだね。
 きみの話を聞きながら、ふと懐かしい歌詞を思い出した。
ーきみがそばにいるから、毎日が新しい。
 そうか、こういうことだったのか。
「もしもし、ちゃんと聞いてる?」
 きみはまだまだ伝えたいことが、たくさんあるようだ。

Written by ken1

2019/03/10 at 23:22

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きみのもしもし #585

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 きみが心配そうに笑っている。
 どうしたの?とぼくが尋ねると、
 だってね、と今度は少し苦笑する。
 そしてぼくの隣に座り、一緒にテレビの方を向く。
 珍しいね、この手のビデオを観るなんて。
 あぁこの映画ね。
 今度はぼくが苦笑する。
 もしもし。
「” 何もしない “をするのがいい時もあるよ」
 きみは字幕を読み上げた。
 もしもし。
「きみはクリストファー・ロビンでしょ」
 きみはぼくの手をつつく。

Written by ken1

2019/03/03 at 18:51

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