きみのもしもし #597
ー心のフィルムに写す。
著名な写真家が、今日そう言っていた。
だからあの日はカメラを持って行かなかったのだと。
あの日が彼にとってどんな日だったのか、
うわべだけ想像することは出来ても、
ぼくには本当に理解することは出来ないんだろうな、と思った。
「もしもし、ぼーっとしてないっ。今日はおニューの夏服だよ」
きみがぼくの目の前でくるりと一回転する。
瞬間、夏色のスカートはふわっと開き、
ぼくだけのバレリーナがそこにいた。
そっか。
今日はカメラをカバンから出さずに、
一秒でも長く、きみを見ていよう。
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