Archive for 7月 2019
きみのもしもし #606
ー旅行、どうだった?
きみが覗き込むように聞いてくる。
素敵な友だちができたよ。
楽しいことなんて当たり前の報告だから、
きみに伝えるのはそれ以上の報告。
もっと早くに知り会えていたらなぁ。
ー今のあなただからそう思うのよ。
もしもしと、きみが微笑んでいる。
ーもっと早くに知り会っていたら、
友だちにはなれなかったかもよ。
そうだね、素敵な出逢いって、そうかも知れないね。
きみはゆっくり頷いた。そして、
ー写真、見せて。
と、ぼくのスマホを指さす。
ぼくはそのひととの思い出が詰まった写真と一緒に、
旅の話を始めた。
きみのもしもし #605
ーひとりでは飲みきれないわ。
ガス入りウォーターのミドルの瓶を指差してきみが言う。
ーそのワインのチェイサー代わりにどうぞ。
きみがもうひとつのグラスにとくとくとくと注ぐ。
ぼくはそのグラスに口をつける。
ガス入りもいいな。
少し酔いが入ったぼくを炭酸がリフレッシュさせる。
ーもしもし?
うん?
そしてきみが話を続ける。
それはそれは楽しい話を続ける。
きみのもしもし #604
ーもしもし、その時間は連絡できないわ。
きみが申し訳なさそうにメッセージを送ってくる。
ぼくは思う。何もきみのせいではないよ。
ーだから少し早いけど、
何となく、きみの顔が目に浮かぶ。
ー気をつけて行ってらっしゃい。
ありがとう。
ーたくさん楽しいこと、ありますように。
うん、たくさん楽しい写真撮ってくるよ。
きっと、楽しいことがたくさんあるはず。
今年の夏はいつもとちょっと違う。
そんな気がする。
とっても楽しくなりそうだ。
きみのもしもし #603
ー今日は何の日か知ってた?
ーそう、七夕だよね。
ーでも特別な七夕なんだよ。
きみがふふふと笑う。
ー違うよ、雨だから特別じゃないよ。
きみが首を横に振る。
ー二人もちゃんと働いてるの。
ーきちんと働いてるから神様は二人を会わせてあげるの。
そして、しばらくの沈黙。
ー今日は日曜日。
ー二人の仕事もお休みだから、大手を振って二人は会えるの。
きみはまたふふふと笑う。
ーもしもし、6年ぶりの日曜日の七夕だよ。
きみは遊ぼって笑ってる。