風、空、きみ

talk to myself

Archive for 8月 2019

きみのもしもし #610

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「魔法ってあるのかなぁ」
 きみが真顔で聞いてくる。
 ドラえもんのポケットは魔法じゃないしなぁ。
 昔々、魔法使いサリーってアニメがあったけど。
 きみは不思議な顔をする。
「もしもし、現実の話で」
 そして、
「人と人が理解しあえるようになる魔法があるといいな」
 きみが真顔で口にする。
 そうだね、そんな魔法があるといいね。
 理解できなくても、
 相手を思う心が芽生える魔法があるといいね。
 きみの真顔にふとそんなことを思った。

Written by ken1

2019/08/25 at 20:29

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #609

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 乗り換えの駅で、きみに降ろされた。
 きみがにっこり笑って手を振っている。
 終電間近。
 記憶はここまで。
 朝、目が覚めて枕元のスマホを手繰り寄せる。
 きみから乗り換え案内の検索結果が届いていた。
 そしてぼくもちゃんと返信をしている。
 そうか、昨夜はこうやって帰宅したんだ。
ーもしもし、今日はゆっくりおやすみなさい。
 日付が変わった直後のきみからのメッセージ。
 久しぶりに時間を気にせず楽しめた。
 いい時間だったな。ありがとう。
 窓を開け放ち、朝の空気を取りこんで、
 ぼくはもう一眠りすることにした。

Written by ken1

2019/08/18 at 21:39

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #608

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 昔の人はよく言ったものだ。
ー親孝行、したいときには親はなし。
 親父の時から分かっているはずなのにね。
 それなのについ、まだ大丈夫って思ってしまう。
 時に終わりはあるはずなのに。
 何の根拠もなく、まだ大丈夫って思ってしまう。
 それは田舎のお袋に対してだけではなく、
 きみに対しても、まだ大丈夫って思ってしまう。
「もしもし、どうしたの?」
 珈琲に口もつけず、きみをただじっと見ていたら、
 そうだよね、不思議に思うよね。
 どうもしない。ただ。
「ただ?」
 もっと話そうか。呆れるくらいに話そうか。
 そしてまた、きみは不思議な顔をする。

Written by ken1

2019/08/11 at 17:42

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #607

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 暑さは突然やって来た。
 気象庁は後出しジャンケンみたいな梅雨明け宣言をし、
 気象予報士は大気が不安定なので所々で雷雨があると言う。
 そのとおりなんだろうけど、
 とつぜんの暑さはエアコンの効きを悪く感じさせる。
ーおいでよ。
 夜になっても下がらない気温と室温。
 へたっているぼくを見透かしたようなきみからの誘い。
ーもしもし、ここまで来るのも暑いと思ってるんでしょっ。
 ぼくの思考までも見透かしているようだ。
ースイカもあるよ。
 きみは食べ物でぼくをつろうとする。
 ぼくは少し考える。
 確かにスイカは魅力的だ。
 熱帯夜の週末、
 ぼくは靴箱の上にあったエスパドリューを取り出した。

Written by ken1

2019/08/04 at 18:18

カテゴリー: kiss

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